地震にも負けない、原生林が広がる仙人境・九寨溝―中国世界遺産

中国の世界遺産、9回目は1992年に登録された自然遺産、四川省にある九寨溝の渓谷の景観と歴史地域(以下、九寨溝)です。九寨溝は同省のアバ・チベット族チャン族自治州九寨溝県にあるのですが、九寨溝県は九寨溝にちなんで改名されました。

手つかずの原生林が広がる仙人境

九寨溝は、四川省の北部、南坪県の岷山山脈の奥深いところに位置し、総面積は約6万ヘクタールにわたります。標高2000~3100メートルの高地に豊かな原生林が広がり、カルスト地形の湖沼が連なり、チベット仏教ゆかりの寺院が点在しています。エメラルドグリーンをはじめ、陽光のかげんによってさまざまに色を変える棚田状の池「海子(ハイズ)」は全部で108個あると伝えられ、それは女神がとり落とした宝鏡の破片だというロマンティックな伝説が残っています。「この世の仙人境」「童話の世界」とも形容される九寨溝には、パンダ、キンシコウ、クチジロジカなどの国家1級保護野生動物が暮らしています。また、2000年にアカデミー賞外国語映画賞に輝いたアン・リー監督作品「グリーン・デスティニー」のロケ地となったことでも有名です。

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九寨溝2

九寨溝3

九寨溝より帰りて水を見ず

もともと、この地にはチベット族の村が9つあったことから、九寨溝という名がつけられました。「黄山より帰りて山を見ず、九寨溝より帰りて水を見ず」という中国のことわざが物語るように、九寨溝は水が織り成す景色で別格の存在です。石灰岩の成分が沈殿している影響で湖底は白い鏡のようになり、そこへ岷山山脈から流れてきた澄んだ水が太陽の光に反射してエメラルドグリーンに輝く。地理的に、北は甘粛省、青海省に接しており、チベット族が多く住んでいるエリアですが、他にチャン族、漢族、回族なども居住しています。

九寨溝4

九寨溝5

地震で大ダメージ

九寨溝がある四川省では近年で大きな地震が2度ありました。2008年5月の四川大地震では九寨溝は大きな影響がありませんでしたが、2017年8月の九寨溝地震では大きな被害を受けました。九寨溝地震により、さざ波がゆらゆらと煌くように見えるのが特徴で、火花が飛び跳ねるように見えることから「火花海(別名:火花池)」と呼ばれている九寨溝の観光名所が決壊し、1日で水の大部分が流出しました。さらに、九寨溝のY字の真ん中に位置し、「中国で最も美しい滝6カ所」の一つに選ばれている「諾日朗(ノリラン)滝」は水が干上がり、箭竹海の下り坂の近くに位置し、九寨溝のパンダが遊んだり、水を飲んだり、餌を食べたりすることからその名が名付けられた「パンダ海」の水は濁ってしまいました。

地震により美しい自然景観が破壊されたことが残念だと語る声も聞かれましたが、中国の専門家は、「九寨溝の美しい景色は、自然の風景。元々、いろんな時代に起きた大地震の産物で、自然地理の変化の過程で形成されてきたため、人工的に修復することは勧められない。人の手で修復すれば、それは『人工景観』であって、『自然景観』ではなくなってしまう。以前の景観が破壊されてしまったことは確かに残念だが、地震により新しい景観ができ、今後はそれを楽しむことができる。それを見るというのもいいチョイス」と見解を示しました。

大きなダメージを受けた九寨溝ですが、四川省災害対策委員会専門家委員会の顧林生・副主任は2017年9月に「九寨溝の景観の85%には、変化はほとんど見られなかった。九寨溝海子地震の前と後の航空写真を比較すると、九寨溝の中心部にある湖沼は、ほぼ変わっていない」と話しており、2018年4月には九寨溝地震の影響を受けた九寨黄龍空港が運用を再開しました。

九寨溝が地震で決壊、専門家「人工的な復元はしないほうがいい」―中国メディア

九寨溝6

九寨溝7

神秘的な魅力で人々を惹きつけている九寨溝。地震で大きなダメージを受けましたが、専門家が言うように、自然のままを保つのが九寨溝の魅力かもしれません。「地震で景観が破壊された」と捉えるよりも、「地震により新たな景観が生まれた」と考えた方が面白いかもしれませんね。

           

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